委員長挨拶

公益社団法人 日本生体医工学会
ME技術教育委員会
委員長 中島章夫(杏林大学保健学部 教授)


 現代の医療は目を見張る進歩を続けています。中でも、多くの医療機器や新しい設備・システムは最新医療を支えるための大きな柱ともなっています。
 このような機器や設備・システムを有効に働かせるためには、確かなME技術を理解し、それを運用する知識と応用力が望まれます。MEというと、かつては心電図やCTなどの装置のことを指していると思われていましたが、機器とは直接結びつかないバイオ技術や創薬と言われる領域でもME技術が役立っています。その意味ではME技術は医療全般にわたる普遍的な技術であるとも言えます。
 (公社)日本生体医工学会はかつて日本ME学会と称しておりましたが、医療技術とくにME技術の領域でもアカデミックな部分から臨床の最先端まで、多くの先生方が活躍され、世界的リーダーシップを取られる先生方も少なくありません。一方で、生体医工学の価値は医療の場以外では十分な認識が得られていないこともあって、学術的には他の先進諸外国に比べて必ずしも適切に評価を得ているとは言えません。私たちはME技術教育の立場から医療におけるME技術の意義を幅広く伝えると共に、適切な知識を習得、確認できる場を提供して参りました。このような努力を重ねることによって、ME領域に関わる人材が臨床の場、企業、研究分野で数多く活躍できることを期待しています。
 医療現場ではME技術者やCE(臨床工学技士)の方々の努力無くしてME機器に関連する事故やヒヤリ・ハット事例を減らすことはできません。安全の観点からはME機器の保守・点検や安全管理などを担当するME技術者の処遇などまだまだ、医療界全体として十分な環境が整備できているとは言えませんし、企業と連携した医療機器開発環境、若い研究者の研究環境なども、よりよい方向に進めていくことが必要でしょう。
 (公社)日本生体医工学会では、これらの問題を強く認識して各種の委員会や研究会、大会でのテーマなどで改善を図っています。なかでも1977年に発足した本「ME技術教育委員会」はME技術の普及とそれを持つ方々の資格認定や研修を支援するために、40年余の歴史をもつ第2種ME技術実力検定試験や、より上位の第1種ME技術実力検定試験を主催し、これに合わせて各種の講習会を行っております。試験の合格者にはそれぞれ「第2種ME技術者」、「第1種ME技術者」の呼称を使用できるものとしています。特に、第1種ME技術実力検定試験の合格認定証取得者のうち、医療国家資格を有している方々は、申請により「臨床ME専門認定士」の認定を得られます。また、これら認定を受けた技術者が、2020年初頭から世界を震撼させたCOVID-19治療に用いられている人工呼吸器やECMOなどの生命維持に直結する医療機器の開発はもとより、臨床で各種トラブルに対応できるよう適正な安全管理と専門性をもって活躍していることが再認識できたと思われます。
 現在の医療は医療機器なくして一日たりとも行えません。医療における国民の安心を最終目標にして、ME技術と研究のさらなる発展と皆様の活躍のために、ME技術教育委員会は活動を続けます。
 今後とも、本委員会へのご指導、ご支援を賜りたくお願いさせて頂くと共に、ご意見、ご要望をお待ちしております。